二乗和の公式を導出するアイデアを補完、完成させる

二乗和の公式の導出について、ひとつ前の記事であるアイデアを提示しました。

二乗和の公式の導出


そしてそのアイデアに基づいて、二乗和公式の成立過程を示しましたが、「その過程にミスがあるから、そのミスを見つけてね」という課題を提示しました。

ミス、誤りは見つかりましたか?

結論にはご存知の通りの公式そのものが出てきているので、「さて、どこに誤りがあったのか・・」となった方もいらっしゃったでしょう。先の導出では・・

表から Tn/​Sn​​ の値を計算し、それを基に一般項を推測していますが、これは「推測」に過ぎません。表からパターンを読み取っているだけで、「そこまではたまたま、そのようなパターンが抽出できた」というだけのことです。「nを100まで進めても、本当に大丈夫なのか?」という問いには、実際にnを100まで進めた表を作成しないと確認がとれないのです。
これでは、一般項と呼ぶことはできませんね。
それが誤り、ミスです。

ただ、アイデア自体は面白いですよね。
そこで、アイデアに一般性を与えるため、導出を丁寧に行ってみましょう。


✅ 目標

$$
T_n = \sum_{k=1}^n k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}
$$


📌 前提知識(既知とする公式)

自然数の和:
$$
S_n = \sum_{k=1}^n k = \frac{n(n+1)}{2}
$$

これの成立は、手書き導出の中でも示しています。


🧠 証明方針

  1. 比 \( R_n = \frac{T_n}{S_n} \) に対して、
    $$
    R_n = \frac{2n+1}{3}
    $$
    が成り立つことを数学的帰納法で証明する。
  2. そこから、
    $$
    T_n = S_n \cdot R_n = \frac{n(n+1)}{2} \cdot \frac{2n+1}{3} = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}
    $$
    を導く。

📝 証明

Step 1: 定義

$$
S_n = \sum_{k=1}^n k = \frac{n(n+1)}{2}, \quad T_n = \sum_{k=1}^n k^2
$$

比を次のように定義する:
$$
R_n = \frac{T_n}{S_n}
$$


Step 2: \( R_n = \frac{2n+1}{3} \) を数学的帰納法で証明

(i) 初期ステップ:( n = 1 ) のとき

$$
T_1 = 1^2 = 1, \quad S_1 = 1 \Rightarrow R_1 = \frac{T_1}{S_1} = 1
$$

一方、
$$
\frac{2 \cdot 1 + 1}{3} = \frac{3}{3} = 1
$$

したがって、\( R_1 = \frac{2 \cdot 1 + 1}{3} \) は成立。


(ii) 帰納法の仮定: \( R_k = \frac{2k+1}{3} \) が成り立つと仮定(任意の \( k \in \mathbb{N} \))

つまり、
$$
T_k = S_k \cdot \frac{2k+1}{3}
$$


(iii) 帰納ステップ: \( R_{k+1} = \frac{2(k+1)+1}{3} \) を示す

$$
T_{k+1} = T_k + (k+1)^2
$$

帰納法の仮定より:
$$
T_{k+1} = S_k \cdot \frac{2k+1}{3} + (k+1)^2
$$

また、
$$
S_{k+1} = S_k + (k+1)
$$

よって、
$$
R_{k+1} = \frac{T_{k+1}}{S_{k+1}} = \frac{S_k \cdot \frac{2k+1}{3} + (k+1)^2}{S_k + (k+1)}
$$

分母・分子に \( S_k = \frac{k(k+1)}{2} \) を代入:


分子
$$
\frac{k(k+1)}{2} \cdot \frac{2k+1}{3} + (k+1)^2
= \frac{k(k+1)(2k+1)}{6} + (k+1)^2
$$

通分して整理:
$$
= \frac{k(k+1)(2k+1) + 6(k+1)^2}{6}
= \frac{(k+1)[k(2k+1) + 6(k+1)]}{6}
$$

中括弧内を計算:
$$
k(2k+1) + 6(k+1) = 2k^2 + k + 6k + 6 = 2k^2 + 7k + 6
$$

よって、分子は:
$$
\frac{(k+1)(2k^2 + 7k + 6)}{6}
$$


分母
$$
S_k + (k+1) = \frac{k(k+1)}{2} + (k+1) = (k+1)\left(\frac{k}{2} + 1\right) = (k+1)\cdot \frac{k+2}{2}
$$


したがって、
$$
R_{k+1} = \frac{\frac{(k+1)(2k^2 + 7k + 6)}{6}}{(k+1)\cdot \frac{k+2}{2}} = \frac{2k^2 + 7k + 6}{3(k+2)}
$$

ここで、\( 2k^2 + 7k + 6 = (k+2)(2k+3) \) なので:

$$
R_{k+1} = \frac{(k+2)(2k+3)}{3(k+2)} = \frac{2k+3}{3} = \frac{2(k+1)+1}{3}
$$


✅ 帰納法より、すべての \( n \in \mathbb{N} \) に対して:

$$
R_n = \frac{T_n}{S_n} = \frac{2n+1}{3}
$$


Step 3: \( T_n \) の公式を導出

$$
T_n = S_n \cdot R_n = \frac{n(n+1)}{2} \cdot \frac{2n+1}{3}
= \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}
$$


✅ 結論

$$
T_n = \sum_{k=1}^n k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}
$$

このような手順を踏めば、アイデアをまっとうな導出方法として活かすことができるのでした。

高校生のなかには、「そうはいっても、数列の各項を途中まで並べてあって、その一般項を考えろ、って問題はよく見かけるんだけど・・」という方もあるでしょう。
そう、よく見かけますよね。だからあれ、多くは問題としては不成立です。

しいていえば、数列の学習初期に、「等差数列って?」「等比数列って?」というところを感覚的に把握してもらうための「悪問」だと割り切ってください。

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