【お題】
偶数と偶数を足した場合、その答えはどうなりますか?
次の中から選んでください。
(1)必ず奇数になる
(2)必ず偶数になる
(3)ほとんどの場合で偶数になるが、極まれに奇数になる場合もある
【解答】
まず初めに、まっとうな数学の問題として答えておきましょう。
偶数と偶数を足すということを、文字式で示します。
nとmをそれぞれ整数すると・・・
$$2n+2m$$
これが偶数と偶数を足し合わせるを文字式で表したものになります。
この式、
$$2n+2n$$
と書く人があるかもしれませんが、これでは、2と2、4と4、18と18などのように同じ偶数を足し合わせるということにしかなりませんので注意が必要です。
さて、あらためて式の計算を進めてみましょう。
$$2n+2m=2(n+m)$$
$$ここでn+mは整数であり、したがって2(n+m)は偶数である$$
と証明することができます。問題文に従えば、答は(2)ということになります。
さてここで少し考えてみたいことがります。
今回のお題で、「文字式を使わずに具体的な数字を用いて検証する」という手法をとってみます。
つまり・・・
$$2+4=6$$
$$18+26=44$$
$$102+258=360$$
$$56+1028=1084$$
など、具体的な例を挙げて計算してみるのです。
さて、どうでしょう。どうやら奇数になることは「なさそう」です。
心配ならもう少し計算例を増やしてもいいでしょうが、いずれにせよ、どうやら奇数になることは「なさそう」という結論には達するはずです。
つまり、答としては・・
(2)必ず偶数になる
(3)ほとんどの場合で偶数になるが、極まれに奇数になる場合もある
のどちらかを選ぶことになります。
・・さて、日常生活において、上記のような2択を迫られた場合、ついつい無難な(3)を選んでしまいませんか?
(3)ほとんどの場合で偶数になるが、極まれに奇数になる場合もある
どうでしょう?
無難というのではなく、大人の姿勢として、だとか、奇数であるかもしれない可能性が残る以上(3)を選ぶべきだとか・・、なんとなくもっともらしい理由も考えることができます。だって理性的というか人道的というか民主的というか、ですよね。
ですが、先の文字式による証明に納得していれば、(3)を選ぶことはありません。(3)を選ぶなんて、考えることを放棄しているんじゃないか、とすら思えてしまいます。そんなわけで(2)を選べる人は(3)と主張する人に説明し、説得を試みることになります。
・・ところが実は、日常生活においては、これをけっこう難しいと感じている人が多くあります。
先の証明方法を理解し納得するには、ある程度以上の「知識」「知性」が必要だから、です。
もっとも、この例題は簡単なものですから、そこまでハードルは高くありませんが、(3)の選択肢がもつ、(奇数になる)可能性を否定するものではなく、(まず偶数だろうという)大筋の正しさを認定してもいる表現は、感情的にはしっくりくるので、受け入れやすい考え方ですから、ここから(2)に納得してもらうのはなかなか難しいのです。
もちろん、日常生活においては、正しさを追求することだけが、正義でもありませんし目的でもない、ということは往々にしてあります。
けれども、だからといって とは限らない と肝に銘じておくことは、より以上に大切なことだと思うのです。