PCR検査について数学的に考える

新型コロナウイルスの猛威がやみません。
ここ豊岡市では4月8日現在、幸いにして感染者の報告・報道はありませんが、兵庫県というくくりの中で「非常事態宣言」を受けています。
いち市民としてできることは、手洗いの徹底、三密(密集・密閉・密接)となる空間や人との接触をできるだけ避ける、しかないように思います。
意識としては、「既に自分は保菌者(細菌ではなくウイルスですけど)と思い振る舞う」のが良いように思います。

さて、このコロナウイルスへの感染の有無を調べる方法に、PCR検査というものがあります。
PCRは、遺伝子を扱う業界ではポピュラーというか、必要必須な機械というかだと聞きます(私は福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだ」という本で、その触りを知りました。静かで穏やかな文章ですので、読みやすく生物学の世界を知ることができますので、お勧めです)。

で、このPCRによるウイルスへの感染非感染の検査ですが、その精度については一般にこのように言われています。

感度:30~70%
特異度:99%

感度:真にウイルスを持っている人の検体を検査した時、陽性と判定する割合
特異度:ウイルスを持っていない人の検体を検査した時、真に陰性と判定する割合


だそうです。

さて、せっかくですので数学の話と結んでみましょう。
感度に幅があるのでこれを50%とします。

で、我がほんまち数学塾がある豊岡市をモデルに「もし市民全員がPCR検査をしたら」を考えてみましょう。
豊岡市の人口を80,000人。感染率を全国平均の3%とします。
この場合・・

真の感染者は2,400人ですが、PCR検査の感度から・・
そのうちの1,200人が陽性とされ、1,200人が陰性とされます。
一方、無感染者の77,600人は、PCR検査の特異度から・・
そのうちの776人が陽性とされ、76,824人が陰性とされます。

検査の結果、陽性判定を受けた
1200+776=1,976人 には、何らかの医療処置が検討されます。
とはいえ、現在治療方法があるわけではないので、重症ではない限り経過観察をしましょう、ということになると思います。隔離、という意味なら、どこか病院なり施設なりへ、ということです。
ちなみに、豊岡病院で、感染者病床=4、一般病床=463 だそうです。
どうも病院へ隔離というのは無理筋となりそうです。数が足りません。しかも1,976人のうち、776人は非コロナ感染者です。本来なら何の問題もない人が、「なんだかなぁ」と思いながら隔離され、それが市民の約1%というわけです。

一方で陰性と判定された人はというと・・
1,200+77,600=78,800人 です。この人たちは、これまで通り暮らすことになります。うち1,200人は感染者です。
この場合、市中に1,200÷78,800×100=1.5% の感染率が残ったまま、ということになるわけです。
検査前の市中感染率は3%でした。人々が陰性判定に安心してアクティブに生活すると、この1.5%の差は簡単に消し飛ぶでしょう。

と考えると、どうもPCR検査を市民全員に施す、とうのは、負担ばかり大きく実りが少ない、と言えそうです。真の感染者のパーセンテージがもっと高ければ、まだしもでありますが、実際は豊岡市を含め但馬間管内ではまだ感染者報告はありません。
だったら、「できるだけおとなしく生活しろ」というのは、無策に見えるかもしれませんが、合理的な判断だと言えると思う次第です。検査をしたとしても、当面は結局、そうするしかないのですから。

なお、安倍総理は「PCR検査1日2万件に」と表明しました。
もちろん全国で、です。
これにしても数字は上記の拡大版になるわけで、狙いはもっと別のところにあると考えるべきでしょう。残念な方には残念ながら、国民の直接の安心のための検査拡大ではないはずです。
※だって1億国民とすれば、日に2万件検査しても5,000日かかるんですよ

余りに述べると、政治的な色が漂うことになるでしょうから、この辺でやめておきます。


ほんまち数学塾の考えとしては

「手を洗おう、顔も洗おう」
「丁寧には大事だけど、回数はもっと大事」

を述べて、この稿を終えます。

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