足跡の記憶

彼はノートを見つめていた。
さっきまで、ただ並んでいるだけだった数字が、今は一枚の地図になっている。

「では」

ア・イ・ウ・エ

「ここからは、この地図を使って問題を解いていこう」


$$
a_{2020}
$$

「まずは2020番目の項が、どの群に入るのかを考えよう」

彼は先ほど整理した表を見た。

「第 \(p\) 群は」

$$
2^{p-1}
$$

番目から始まり、

$$
2^p-1
$$

番目で終わります。

「そう」
「では、2020番目はどこに入るかな」

彼は少し考えた。

「\(2^{10}\) が1024ですね」

「よく知っていたね」

「パソコンでよく見ます」

私は笑った。

「そういう豆知識は、案外役に立つ」

彼は計算を書いた。

第10群の最後は

$$
2^{10}-1=1023
$$

第11群の最後は

$$
2^{11}-1=2047
$$

「2020は、この間にあります」

「つまり、第11群です」

「そう」

「第11群の値は?」

「群番号より1小さいので」

$$
11-1=10
$$

したがって、

 ア =\(10\) 


「これは前回、もう分かっていたね」

$$
a_n=k
$$

となるのは、

$$
2^k\le n<2^{k+1}
$$

となる場合だった。

したがって、そのような \(n\) の個数は

$$
2^k
$$

だから、

 イ =\(2^k\) 


「では、その中で一番大きい \(n\) は?」

彼はすぐに答えた。

「範囲の最後です」

$$
2^{k+1}-1
$$

したがって、

 ウ =\(2^{k+1}-1\) 


「最後は和だ」

私は、先ほど整理した表をもう一度指さした。

「群ごとの和も、もう求められるようになっている」

彼はうなずいた。

「第10群までなら、和の記号Σを用いれば

$$
\sum_{i=1}^{10}(i-1)2^{i-1}
$$

になります」

「この計算は少し工夫が必要なので、別にまとめておこう」
「これを計算すると・・」

$$
\sum_{i=1}^{10}(i-1)2^{i-1}=8194
$$

「では、その先は?」

彼は少し考えた。

「2020番目までは、第11群を途中まで使います」

「そう」

「第11群は何番目から始まる?」

「1024番目です」

「2020番目まで使うので」

$$
2020-1024+1=997
$$

「つまり、第11群の値である10が997個あります」

したがって、

$$
10\times997=9970
$$

よって、

$$
8194+9970=18164
$$

したがって、

 エ =\(18164\) 


彼は答えを書き終えた。

「終わりました」

私は問題文をもう一度見た。

「最初、この問題を見たときのことを覚えている?」

彼は苦笑した。

「何をすればいいのか、全然分かりませんでした」

「そうだったね、でも」

私は指を折りながら言った。

「まず、できることをやってみた」
「具体的な数を代入した」
「そこで見えた規則を、問題文に戻って確かめた」
「そして今度は、その規則を群数列という形に整理した」
「最後は、その地図を使って問題を解いた」

彼はノートを見た。

そこには、一枚の表がある。

群の値。
群の項数。
元の数列での位置。
群の和。

最初は複雑に見えていた問題も、一度整理してしまえば、あとはその地図を読むだけだった
数学では、問題を見た瞬間に解き方がひらめくことは、それほど多くない。

だから、手を動かす。
観察する。
見つけた規則を確かめる。
そして、使いやすい形に整理する。

この順番を大切にすれば、霧の中にいたはずの問題も、少しずつ輪郭を現してくれる。

答えを出すことももちろん大切だ。
けれど、それ以上に大切なのは、自分で歩ける地図を作ることなのかもしれない。
その地図は、この問題だけでは終わらない。
作り上げた地図は、足跡の記憶だ。
次に似た景色に出会ったときも、きっと役に立ってくれる。
たとえ、そこが深い霧の中であったとしても。

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