\( \sqrt{2} \) なら、概数を知っている人も多いかもしれない。
有名な語呂合わせがある。
人夜人夜に人見頃。
漢字で書く機会はあまりない。
けれど、音の並びとしてなら、多くの人の記憶に残っている。
$$
1.41421356
$$
この数を二乗すると、ほとんど2になる。
実際、
$$
1.41421356 \times 1.41421356 = 1.999999993287874
$$
である。
普通に暮らしていれば、これはもう2として扱っても差し支えない。
それくらいの精度だ。
だから、\( \sqrt{2} \) の整数部分は1だと言ってよさそうに見える。
などと私が説明すると、生徒から、ふいに指摘を受けることがある。
「だったら、\( 1.4 \times 1.4=1.96 \) を見て、整数部分は1だと言ってもいいんじゃないですか」
なるほど、と思う。
彼が言っているのは、精度の高さに圧倒されてよいのか、ということだった。
たしかに、
$$
1.4 \times 1.4=1.96
$$
だけでは、\( \sqrt{2} \) が1より大きいことは見えても、2より小さいことまでは見えてこない。それは、\(1.41421356\)であっても同じことなのだ。
どれほど2に近い値になったとしても、それだけでは、まだ片側から近づいているにすぎない。
だから、たとえば、
$$
1.5 \times 1.5=2.25
$$
のように、二乗したときに2を超える数も示さなければならない。
つまり、\( \sqrt{2} \) がどこにいるのかを知るには、片側から近づくだけでは足りない。
向こう側にも、杭を一本打たなければならないのだ。
もっとも、ふつうは語呂合わせや開平計算に頼らず、こう考える。
$$
\sqrt{1}<\sqrt{2}<\sqrt{4}
$$
したがって、
$$
1<\sqrt{2}<2
$$
である。
ずいぶん粗い見積もりに見える。
\( \sqrt{2} \) は1.1かもしれない。
あるいは1.9かもしれない。
その程度のことしか言っていないようにも見える。
しかし、整数部分を知りたいだけなら、これで十分なのだ。
\( \sqrt{2} \) は1より大きく、2より小さい。
だから、整数部分は1である。
精密ではない。
だが、必要なことはすべて言っている。
数学では、ときどきそういうことがある。
細かく知ることよりも、どの範囲にいるかを押さえることの方が大切になる。
では、次の問題ならどうだろう。
\( \sqrt{131} \) の整数部分を \(a\) 、小数部分を \(b\) とするとき、\(a\) 、\(b\) それぞれの値を求めよ。
やはり、力ずくで近づくこともできる。
$$
11.4 \times 11.4=129.96
$$
$$
11.5 \times 11.5=132.25
$$
だから、\( \sqrt{131} \) は11.4と11.5の間にある。
この時点で、整数部分は11だとわかる。
私は、こういうやり方を否定しない。
効率はよくないかもしれない。
けれど、正解へ向かっている。
自分の手で数を置き、二乗して、確かめている。
その作業には、案外大事なものが含まれている。
ただし、一般的にはもっと短く考える。
$$
121<131<144
$$
である。
したがって、
$$
\sqrt{121}<\sqrt{131}<\sqrt{144}
$$
つまり、
$$
11<\sqrt{131}<12
$$
である。
もっとも、この短い解法にも、ひとつ前提があるのかもしれない。
\(121\) や \(144\) に見覚えがあるかどうかだ。
\(121=11^2\)、\(144=12^2\)。
これがすぐに浮かぶなら、
$$
121<131<144
$$
は自然に見える。
しかし、そこに見覚えがなければ、この三つの数字の並びは、少し唐突に見えるかもしれない。
その場合、\(11.4^2\) や \(11.5^2\) を実際に計算して近づいていくやり方も、それほど遠回りではないのかもしれない。
少なくとも、自分の手で場所を探している。
そういう意味では、効率の悪さの中にも、悪くない手触りがある。
いずれにせよ、\( \sqrt{131} \) の整数部分は11。
問題は、その次である。
小数部分 b は何か。
\( \sqrt{131} \) は、11より大きく、12より小さい数である。
だから、それは
$$
11.\text{何か}
$$
という姿をしている。
この「何か」の部分が、小数部分である。
したがって、
$$
\sqrt{131}=a+b
$$
であり、\(a=11\) だから、
$$
b=\sqrt{131}-11
$$
となる。
小数部分と言われると、0.4とか、0.45とか、そういう小数で答えたくなる。
けれど、\( \sqrt{131} \) はきれいな小数にはならない。
11.4……。
そこまでは想像できる。
しかし、その先はどこまでも続いていく。
ならば、その小数部分を正確に表すにはどうすればよいか。
元の数から、整数部分を引けばよい。
$$
\sqrt{131}-11
$$
見た目は少しも小数らしくない。
しかし、それは \( \sqrt{131} \) の小数部分を、少しの誤差もなく表している。
もしかすると、初めに
$$
11.4 \times 11.4=129.96
$$
$$
11.5 \times 11.5=132.25
$$
と考えた生徒の方が、このことを早く納得するかもしれない。
\( \sqrt{131} \) は、だいたい11.4いくらかの数だ。
そこから整数部分の11を引けば、0.4いくらかが残る。
ただ、その0.4いくらかを、小数で最後まで書くことはできない。
だから、
$$
\sqrt{131}-11
$$
という形で表す。
これは妥協ではない。
むしろ、もっとも正確な表し方である。
次に、もう少し厄介な問題を見てみる。
\( \sqrt{15}+\sqrt{10} \) の整数部分を \(c\) 、小数部分を \(d\) とするとき、\(c\) 、\(d\) それぞれの値を求めよ。
\( \sqrt{15} \) は \( \sqrt{16} \) より少し小さい。
だから、4より少し小さい数である。
つまり、3.いくらかではあるが、かなり4に近い。
一方、\( \sqrt{10} \) は \( \sqrt{9} \) より少し大きい。
だから、3より少し大きい数である。
この二つを足す。
かなり4に近い数と、3より少し大きい数。
大ざっぱに見れば、整数部分は6ではなさそうだ。
けれど、7を超えるかどうかは、まだ少し曖昧である。
繰り上がりが起きるのか。
それとも起きないのか。
そこを確かめる必要がある。
もちろん、ここでも力ずくで概算することはできる。
\( \sqrt{15} \) を小数で求める。
\( \sqrt{10} \) も小数で求める。
それを足す。
必要な桁まで計算すれば、答えにはたどりつく。
だが、少し別の道を取ってみる。
$$
N=\sqrt{15}+\sqrt{10}
$$
とおく。
\( N \) は正の数である。
両辺を二乗すると、
$$
N^2=(\sqrt{15}+\sqrt{10})^2
$$
だから、
$$
N^2=15+10+2\sqrt{150}
$$
となる。
ここで、
$$
2\sqrt{150}=\sqrt{600}
$$
と見る。
よって、
$$
N^2=25+\sqrt{600}
$$
である。
なぜ、\( 2\sqrt{150} \) を \( 10\sqrt{6} \) としないのか。
\( \sqrt{600} \) のままにしておくと、近くに平方数が見つけやすいからである。
$$
576<600<625
$$
だから、
$$
\sqrt{576}<\sqrt{600}<\sqrt{625}
$$
すなわち、
$$
24<\sqrt{600}<25
$$
である。
\( N^2=25+\sqrt{600} \) だった。
したがって、
$$
49<N^2<50
$$
となる。
\( N \) は正の数だ。
だから、二乗の大小から、\( N \) 自身の大小を判断してよい。
$$
49<N^2<50
$$
そして、
$$
49=7^2
$$
である。
つまり、\( N^2 \) は \( 7^2 \) より大きい。
だから、\( N \) は7より大きい。
また、
$$
50<64=8^2
$$
\( N^2 \) は \( 8^2 \) より小さい。
したがって、\( N \) は8より小さい。
よって、
$$
7<N<8
$$
である。
つまり、\( \sqrt{15}+\sqrt{10} \) の整数部分は7。
したがって、
$$
c=7
$$
となる。
小数部分 \( d \) は、元の数から整数部分を引けばよい。
$$
d=\sqrt{15}+\sqrt{10}-7
$$
である。
答えは、
$$
c=7
$$
$$
d=\sqrt{15}+\sqrt{10}-7
$$
となる。
小数部分とは、小数で書かれた部分のことではない。
整数部分を取り去ったあとに残るもののことだ。
だから、それが
$$
\sqrt{131}-11
$$
という姿をしていても、
あるいは、
$$
\sqrt{15}+\sqrt{10}-7
$$
という姿をしていても、何もおかしくない。
小数らしく見えない。
けれど、それはまぎれもなく小数部分なのである。
なお、たとえば。
$$
\frac13
$$
という数を考えてみる。
これは小数で書けば、
$$
0.3333\cdots
$$
である。
整数部分は0。
だから、小数部分は、
$$
\frac13-0=\frac13
$$
となる。
小数部分なのに、答えは分数の姿をしている。
奇妙に見えるかもしれない。
けれど、何もおかしなことはない。
小数部分とは、小数で書かれた部分のことではない。
整数部分を取り去ったあとに残るもののことだからである。


