二乗のかたちを作る喜びについて

二次関数の最大値・最小値を求めてみよう。
微分を習う前なら、あるいはそのあとでも、王道は平方完成であろう。

具体例があった方が分かりやすい。
問題を用意してみた。

xの関数、y=3x²-x+2 の最大値、最小値を求めよ。

さて、平方完成だ。が、

平方完成が苦手だという人は少なくない。
最終的に作りたいかたちは頭に入っている。
それなのに、自分でやろうとすると手が止まる。
おそらく理由は、何を目指して変形しているのかが見えなくなるからである。

そこで今日は、式を追いかけるのではなく、「何を見ながら式を変形しているのか」を一緒に眺めてみたい。

まず、

y=3x²-x+2を

y=3(x²-x/3)+2と書く。

+2は今は関係ない。
あとで足せばよいので、いったん脇へ置いておく。
視線は、x²-x/3だけに向ける。

ここで考えることは一つである。
この部分を、「何かの二乗」にできないだろうか。
余分なものが出てきても構わない。
まずは二乗を作ることだけを考える。

そうすると、(x-1/6)²が候補になる。

実際に展開すると、(x-1/6)²=x²-x/3+1/36となる。
欲しかったx²-x/3が、きちんと現れている。
もちろん、その代わりに1/36が余分についてきている。

数学では、このようなことは珍しくない。
必要なら、あとで帳尻を合わせればよいのである。
そこで、x²-x/3=(x-1/6)²-1/36と書き直すことにする。

これを元の式へ戻すと、y=3{(x-1/6)²-1/36}+2となる。

ここでは少しだけ先を見る習慣を身につけておきたい。
中括弧を外せば、-3/36=-1/12になることは分かっている。
そのあとには、-1/12+2を計算することになる。
どうせ通分するのであれば、

2=24/12

と先に直しておいた方が流れは止まらない。暗算で処理できるだろう。
つまり、あらかじめ、y=3{(x-1/6)²-1/36}+24/12と書いておくのである。

すると、y=3(x-1/6)²-3/36+24/12
=3(x-1/6)²-1/12+24/12
=3(x-1/6)²+23/12

を暗算ベースで進めることができる。

これで平方完成は終わりである。
しかし、本当に見てほしいのは、この変形そのものではない。
完成した式の姿である。

あらためて、y=3(x-1/6)²+23/12を眺めてみよう。
ここには(x-1/6)²がある。
二乗というものは、不思議なくらい素直である。
どんな数を二乗しても、負になることはない。
0か、それより大きい数にしかならないのである。

したがって、3(x-1/6)²も、やはり0以上である。
つまり、この部分は絶対に0より小さくならないパーツなのである。

すると、y=3(x-1/6)²+23/12は、

y=(0以上の数)+23/12

という形になっている。
0以上の数に23/12を足したものは、23/12より小さくなることはない。
したがって、この関数はどんなxを選んでも、23/12より小さくはなれないのである。
そして、一番小さくなるのは、3(x-1/6)²が0になるときである。
二乗が0になるのは、中身が0になるときだけであるから、

x-1/6=0

すなわち、x=1/6のときである。

したがって、x=1/6 のとき、最小値は23/12となる。

では、最大値はどうだろうか。
ここでも見る場所は同じである。

(x-1/6)²を見る。

xが1/6から離れるほど、この値は大きくなる。
グラフならx軸を右へ進んでもよい。左へ進んでもよい。
どちらへ向かっても、二乗の値はどこまでも大きくなっていく。
すると、3(x-1/6)²も、いくらでも大きくなる。
そこへ23/12を足しても事情は変わらない。

yはどこまでも大きくなり続ける。
どこかで止まることはない。
したがって、この関数には最大値が存在しない。

最小値はある。
しかし最大値はない。

二次関数の問いへの解答には、そのような姿もあるのである。


平方完成とは、式を変形する作業だと思われがちである。
しかし、本当に変わるのは式ではない。
見え方である。

最初は y=3x²-x+2 という、振る舞いを感じづらい式だったものが、

y=3(x-1/6)²+23/12

と書き換えられた瞬間、「二乗は負にならない」という性質を、そのまま語り始める。
平方完成とは、計算のための技術というより、式の意味を見える形に並べ替える技術なのだ。
そのように眺めてみると、数学は少し違った景色を見せてくれるはずである。

【補足】答案にはどこまで書けばよいのか

最後に、答案の書き方について一つだけ触れておきたい。
今回の問題では、最小値は 23/12と答えても、多くの場合は正答になる。
問題文が「最小値」を聞いているだけなら、その値だけを書けば要求には答えているからである。
ただ、「実際にその値をとる x が定義域に存在するか」という確認を示す必要はある。

今回なら、x=1/6 のとき y=23/12 となる。この x=1/6 は定義域に含まれているので、この値は実際に達成される。だから、「最小値は23/12」と言うことができるのである。

もっとも、高校数学では、特に断りがなければ x は実数全体を動くものとして扱うことが多い。
今回の問題も、その前提で作られていると考えてよいだろう。
ただ、そのことが問題文に明示されていない場合も少なくない。
「x は実数全域を動くものとする」と一言添えてある方が、より親切な問題だと私は思うのだけれど。

とはいえ、考えようによっては「最大値は存在しない」と答えた時点で、「x は実数全体を動く」と解釈していることは十分に伝わる。出題者が甘えるなら、解答者だって甘えて良いのかもしれない。
その意味では、試験で「最小値23/12」とだけ書いても減点されることはまずないだろう。

それでも、より丁寧に書くなら、x=1/6 のとき、最小値23/12としておくことを勧めたい。xがその値を実際にとることまで示しているので、答案としての完成度は高くなる。

学校や先生によっては、「最小値だけを聞かれていても、『○○のとき』まで書きなさい」と指導されることもある。そこには、こんな意味もあるのだろう。
迷ったときは、「x=1/6 のとき、最小値23/12」と一言添えておこう。その一言が、「その値は実際に達成される」という大切な確認にもなっているのである。

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