白い紙の上に
$$∣a−b∣=∣b−a∣$$
と書く。
教室は静かだ。
「これ、どう思う?」
そう聞くと、多くの生徒は、
「たぶん、そうです。」
と答える。
理由は説明できない。
けれど、違うとも思えない。
その曖昧な頷きを、私は嫌いではない。
一方で数学は、その「たぶん」を、そのままにはしない。
だから、証明することになる。
けれど、私としては、「当たり前だよね」と思える感覚を抱いてほしいと望んでいるところもある。
一方で、直感できる、という生徒には、数学の言葉として正しさを語れるようになってもらいたい、とも思っている。
どちらも、より難しい課題と向き合う際に、その道のりを稼ぐ両輪になってくれるはずだから。
絶対値の定義を手がかりに考えてみよう。
a≧bのとき、
左辺はa-b
右辺は-(b-a)=a-b
よって、左辺=右辺が成り立つ。
a<bのとき
左辺は-(a-b)=b-a
右辺はb-a
よって、左辺=右辺が成り立つ。
a,bの大小関係はこれがすべてであるから、どのような実数の組、a,bに関しても|a-b|=|b-a|は成り立つ。
いつもとは逆に、今回は文字式を先に見た。
では、具体例に戻ってみよう。
aやbに具体的な数を代入すると、何が起きているのか、何を比較、評価しているのかが分かりやすくなる。
(a,b)=(4,1),(3,5),(-3,2),(-1,-2)と四つほど見てみる。
(a,b)=(4,1)のとき、
左辺:|4-1|=|3|=3
右辺:|1-4|=|-3|=3
(a,b)=(3,5)のとき、
左辺:|3-5|=|-2|=2
右辺:|5-3|=|2|=2
(a,b)=(-3,2)のとき、
左辺:|-3-2|=|-5|=5
右辺:|2-(-3)|=|5|=5
(a,b)=(-1,-2)のとき、
左辺:|-1-(-2)|=|1|=1
右辺:|-2-(-1)|=|-1|=1
具体的な数を代入しても、もちろん等号は成立する。
だが、数を代入した目的は、その確認だけではなかった。
数直線上で確認した生徒には、より明確なものが見えているはずだ。
|a−b|も|b−a|も、数直線上の2点a、bの距離を表している。
東京から見た大阪の距離と大阪から見た東京の距離のように、
$$|a-b|=|b-a|$$
となることは、ごく当たり前のことだと思えるだろう。
証明は、正しさを保証してくれる。
数直線は、その正しさを「当たり前」と感じさせてくれる。
その方が、少し遠くまで行ける。
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